
著者プロフィール
飛 浩隆(とび・ひろたか)
1960年生まれ。1981年に三省堂SFストーリーコンテストに入選、その後「SFマガジン」誌を主要な舞台として、鋭い感性と豊かな表現力に支えられた中短篇を発表し、一躍注目を集めた。1992年の「デュオ」を最後に沈黙し、その間は熱心なファンの手による私家版のみでしか作品に接することはできなかったが、2002年に書下し長篇『グラン・ヴァカンス 廃園の天使T』を刊行して完全復活を遂げた。以降は次々と質の高い作品を発表し、2000年代の日本SFシーンを牽引する作家のひとりとなっている。
80年代の諸作は改稿され、短篇集『象られた力』にまとめられた。同書で日本SF大賞受賞、また表題作で星雲賞受賞。近作の『ラギッド・ガール 廃園の天使U』も高い評価を受けている。メディアアーティストの渡邉英徳氏とコラボレートし、〈廃園の天使〉シリーズで描かれる仮想リゾート「数値海岸」をセカンドライフ内に建築・展開して、こちらも注目を集めた。
円城 塔(えんじょう・とう)
1972年生まれ。2006年、『Self-Reference Engine』で小松左京賞最終候補。2007年、「オブ・ザ・ベースボール」で文學界新人賞受賞、芥川賞候補。ペンネームは東京大学大学院・金子邦彦教授の中篇小説「進物史観」(『カオスの紡ぐ夢の中で』所収)に登場する物語生成プログラム「円城塔 李久」に由来。文芸誌、SF専門誌等に精力的に新作を発表している。他の著作に『Boy’s Surface』がある。
一見とぼけた味わいで読者を煙に巻くことも多いが、「機能する小説」、すなわち「読んでいるうちに計算が実行されるような小説」への強い志向は、小説の地平を切り拓く新しい波として大いに注目される。
瀬名秀明(せな・ひであき)
1968年生まれ。1995年に『パラサイト・イヴ』で日本ホラー小説大賞を受賞。しかしオウム真理教による地下鉄サリン事件と理系ホラー小説の関連性がマスメディアで議論されたことを契機に、科学と物語の関係を省察する活動を展開してゆく。
フィクションとノンフィクションの両方を手がけ、作家の立場から学術研究に参画し、その成果を文芸業界に還元するなど、独自の作家活動を進めている。「サイエンスとフィクションのはざまを、すさまじく鋭敏な感覚で、もっともダイナミックに歩んでいる」(櫻井圭記)との評価もある。『BRAIN VALLEY』で日本SF大賞受賞。他に単著として『デカルトの密室』『Every Breath』、編著作・共著作として『ロボット・オペラ』『ミトコンドリアのちから』などがある。
堀 晃(ほり・あきら)
1944年生まれ。技術者として繊維メーカーに勤務する傍ら、ハードSFの傑作を発表し続けてきた。ジャズ、落語、ロボットにも造詣が深く、山下洋輔氏や桂米朝門下の落語家、関西在住のロボット研究者らと交流を持つ。また同時期にデビューした作家かんべむさし氏との掛け合いはいまなお健在で、共著作もある。
1980年、『太陽風交点』にて第一回日本SF大賞を受賞。『遺跡の声』などのトリニティ・シリーズや『地球環』などの情報サイボーグシリーズは、日本のハードSFにおける最良の成果である。また一方で『マッドサイエンス入門』のような軽妙かつ深い洞察に支えられた科学ノンフィクションも著し、科学を目指す多くのSFファンに希望を与えてきた。他に『梅田地下オデッセイ』『バビロニア・ウェーブ』など。近年も精力的に短篇を発表しており、Nippon2007ではCAFE Scifi+tiqueのメンバーとしても白衣姿で若者を魅了した。
山田正紀(やまだ・まさき)
1950年生まれ。学生時代に中近東を放浪し、帰国後の1974年に『神狩り』にて鮮烈デビュー。その後30年以上にわたってSF、推理、伝奇、青春、アクション等、さまざまな分野でつねに第一線で活躍を続けてきた。『三人の「馬」』(『虚栄の都市』改題)などのポリティカル・アクション小説で展開した先駆的な設定と描写は、『機動警察パトレイバー2』の押井守監督らに大きな影響を与えている。
科学的なガジェットを言語的観点から剛胆に作品に取り入れ、そこから圧倒的な筆力で幻視世界を構築する技に定評がある。『宝石泥棒』他で星雲賞を複数回受賞、『最後の敵』で日本SF大賞受賞、『ミステリ・オペラ 宿命城殺人事件』で本格ミステリ大賞と日本推理作家協会賞をダブル受賞。近年も『サイコトパス』『カオスコープ』等コンスタントに注目作を放ち、さらなる挑戦を続けている。
小松左京(こまつ・さきょう)
1931年生まれ。少年時代は「うかれ」の渾名で呼ばれ、神戸一中時代には高島忠夫氏とバンドを組み、京都大学時代から高橋和巳氏と同人誌を刊行していた。「モリミノル」などのペンネームでマンガ執筆の経験もある。大学卒業後は雑誌記者、ラジオのニュース漫才の台本執筆などを経験。1959年の「SFマガジン」創刊号に衝撃を受け、SFを志す。「地には平和を」(1961年)で第一回空想科学小説コンテスト努力賞。その後は小説執筆という枠を超えて活躍。研究者らと日本未来学会を創設し、1960年代後半の未来学ブームを牽引する。1970年には「国際SFシンポジウム」を主催、また同年には日本万国博覧会でテーマ館サブプロデューサーなどを務めた。その後も関西の文化・学術研究の発展に寄与し、関西国際空港やけいはんな学研都市の設立にも携わっている。つねに新たなメディアを模索し、「作家」の概念を拡げてきた日本SFの第一人者である。
ベストセラーとなった『日本沈没』(1973年、日本推理作家協会賞受賞)や『首都消失』(1986年、日本SF大賞受賞)など、科学・社会・人文諸分野への力強い洞察を有機的に組み合わせた骨太なシミュレーション小説の功績がクローズアップされがちであるが、その作風は多岐にわたる。「くだんのはは」(1968年)などの本格ホラー、「あやつり心中」(1986年)などの人情味溢れる芸道小説、『宇宙人のしゅくだい』(1974年)などの児童SF、『未来の思想』(1967年)や『ユートピアの終焉』(1994年)などの思想書、『黄河』(1986年)などのルポルタージュ……と、各領域でいまなお輝きを失わない傑作を書いている。なかでも「神への長い道」(1967年)、「結晶星団」(1972年)、「ゴルディアスの結び目」(1976年)などの本格SF中篇諸作では「宇宙にとって人類とは何か」という命題に挑み、多くのSFファンに計り知れない衝撃と影響を与えた。
近年は谷甲州氏と共著で『日本沈没 第二部』(2006年)を33年ぶりに上梓。『小松左京自伝』(2008年)では「最後に考察エッセイをやってみたい、宇宙にとって生命とは何か、知性とは何か。それから文学とは何か」と語り、生涯の大きな課題に意欲を燃やした。今回のシンポジウムはその意向を受け継ぐものである。
