取材・文/須山さちよ  写真・イラスト/KEI-CO  協力/ぴえろ ジョー・インターナショナル

アニメとファッション。かつて相容れなかったはずの二つの異文化が、いつの間にか親密な関係を築き上げています。昔からアニメの衣装デザインや色彩設計が流行を意識することはあっても、その逆は考えられませんでした。ところが、最近では「ファッションブランドがアニメとコラボする」というような話がチラホラと耳に入ってきます。驚いたことにファッション業界のほうがアニメの影響を受け、そのスタイルをアイデアソースとして取り入れる動きさえあるというのです。
では、実際のところ、どのようなコンセプトや発想から「アニメ」という素材を起用しているのでしょうか。今回の特集ではそうした企画の舞台裏に迫り、デザインの現場を通じてアニメの魅力を再発見してみたいと思います。というわけで、第1回は究極のアイドルとして未だ根強い人気を誇る『魔法の天使 クリィミーマミ』と奇跡のコラボを果たしたgalaxxxyのデザイナー、岸ひろみさんにお話をお聞きしてきました!

 

★『魔法の天使クリィミーマミ』をファッションアイコンとして、洋服に起用しようと思ったきっかけについてお聞かせください。

galaxxxyをブランドとして、もうひとつ上のステージへ持って行くには何をしたらいいのかと考えていた頃、“スタイルを確立しているカッコイイもの”とのコラボがいいんじゃないかという話になりました。その瞬間に「クリィミーマミしかないっ!」と、直感で思いました。それが去年の5〜6月ぐらいです。ブランドを立ち上げて3ヵ月経った頃ですね。

★制作会社であるぴえろさんに、プランを出した時の感触や反応等はいかがでしたか。

最初、ぴえろさんのサイトの商品化問い合わせフォームからメールを出してみたんです。でも1ヵ月ぐらいお返事をいただけなくて、「まぁ、当然ダメだよなぁ」と思っていた頃にご連絡があって、(担当の方と)お会いしました。ダメ元で送っていたので、すごくうれしかったです。(同席しているぴえろのFさんに会釈しながら)ちょうど、忙しい時期だったんですよね。

★(Fさんに)岸さんから送られてきたメールを読んで、どう思われましたか。

Fまず何故だろうと(笑)。正直、不思議に思いました。お話を伺ったら、『マミ』の大ファンということで納得したわけですが、こういうお話をいただくことは滅多にありません。ファッションブランドとコラボレーションさせていただけるなんて、こちらとしてもありがたいということで、私が岸さんとお会いしました。

メールをお送りする際、本当はこういうことしちゃいけないんだろうなとは思ったんですが、映像をキャプチャーして、Photoshopで加工して、お洋服のボディに載せて、デザイン見本を作りました。
言葉だけだとイメージはなかなか伝わらないので、「こういう洋服を作りたい」ということを明確にお伝えするための見本を初めに提出しました。

★メールで最初に出されたデザイン案と今のデザインでは、相違点等はありますか。

ポジ&ネガの総柄はその時お送りしたデザインとほとんど一緒です。ぴえろさんにデザインの元となったイラストをお借りして置き換えただけなので、この時のデザインとほとんど変わっていないですね。
ちなみに、マミちゃんがジャンプしているデザインの物は、ぴえろさんに資料を見せていただいた時に、「すっごく可愛い!」と思って起用しました。

★そのマミは、この洋服のためにぴえろさんのほうで描き下ろした絵柄かと思ったんですが、元々あったイラストだったんですね。

私もこのデザインを見た時に、こういうお洋服を着ているマミちゃんもいたんだ、と思いました。
今回の秋冬の企画をする際、『クリィミーマミ』のDVDを見直してみたんですけど、今観てもメチャクチャ面白いんですよ! 可愛いデザインがあふれているので、また新しい物をご提案させていただこうと考えています。

★企画から製作まで、どれくらいの時間がかかりましたか。

どの工場を使って、どこが一番クオリティの高いプリントを表現してくれるのか。どういうふうな仕上がりだと、ぴえろさんの監修の下でOKサインが出るかなど、いろいろ細かく詰めていったので商品化までは7〜8ヵ月かかりました。

★08S/Sにて『マミ』を実際に洋服に起こしてみて、ファッション業界の反応はいかがですか。

ブランドの趣旨として、「みんなをビックリさせたい」というコンセプトがあるんです。雑誌のタイアップ広告の時期と、商品の仕上がりのタイミングが重なったので、「絶対、マミちゃんを使う!」と、雑誌広告に使用しました。やっぱり、反響はすごかったですね。
いろいろなジャンルの世界でカリスマ性のある方っていらっしゃるじゃないですか。今までそういった方にお店に来て欲しいと思っていても、なかなかつながりを持てないままだったんですが、マミちゃんをきっかけにしてお店に来てくださったり、ご予約していってくださった方もいらっしゃいました。これは当初、私が想像していた以上の広がりです。
それと、繊研新聞(ファッション業界紙)にも取り上げていただいたんですよ。昔一緒に仕事をしていた人が、それを見て連絡をくれて「どうやってやったの?」って、聞かれました(笑)。

★アニメキャラクターって、意外にファッション業界でコラボしたい人が多いですよね。

そうなんですよ! ただ、その入口がわからないんですよね。私も結構前から、好きなキャラクターのお洋服をブランドでリリースしたいなぁというのはあったんですけど、やっぱりビビっちゃって……。
でも、知人でそうした方面に詳しい方にご相談してみたら、「(版権元に)電話してみたらいいじゃん」と軽い反応で(笑)。それを真に受けてご連絡してみたという経緯です。さすがに電話は気が引けたので、メールにしたんですけどね。

★ところで、お客様の反応はいかがでしたか。

galaxxxyのブランドの客層としては渋谷ギャル、と言われるような20歳前後の若い女性のお客さまが多いんですが、「galaxxxyっぽくて可愛い」という感じで、普通に受け入れられました。
図々しい解釈かもしれませんが、マミちゃんを昔から知っているお客様も、たぶん「galaxxxyにあるから」と購入された方もいるんじゃないのかな、と思います。ブランド信頼もあったのかなって良いように受け取っています。とりえあず「アニメ、何ソレ?」という感じはなかったですね。
galaxxxyを作っている人間はアニメ好きなんだ、ということを少しずつ小出しにしていたので、それも功を奏したんでしょうか(笑)。
あとは純粋にマミちゃんが可愛いので、ビジュアルで購入してくれた方も少なくないと思います。商品にはちゃんと『クリィミーマミ』のタグが付いてて、そのタグもすごく可愛くて好評でした。
元々マミちゃんのファンだったという方も、クチコミでショップに買いに来てくださいました。

★歌手のmeg rockさんが、中川翔子さんにプレゼントしたとのお話を聞きました。

そうなんですよ! すごくうれしかったです。
発売して3日経ってから「クリィミーマミの洋服入荷しました!」ってPOPを作って店頭に貼ったんです。そこからですね、街を歩いている人の反響が目に見えて増えていったのは。

★商品リリースの時期は、いつ頃だったんですか。

スタートは今年の4月末ですね。3週間位で1,000枚突破しました。うちのブランドとしても、かなりの快挙です! 広まるのも早かったです。

★それは素晴らしいですね。岸さんご自身は、実際に街中で着ている方を見かけたことはありますか。

夜とか遊びに行くと男の子でマミ服を着ている方とか、何人か遭遇したことがあります。「その服、可愛いね〜」って、ついつい話しかけちゃいますね。正体は明かさず……怪しいですよね(笑)

★ちなみに、メンズラインでの展開はないんですか。

岸 Mサイズのパーカーは、男性でも細身の方だとジャストサイズで着ていただけるんですけど……メンズラインも出そうかな(笑)。いえ、出します!
ストリート系のメンズ雑誌のリースなども増えてはいるんですよね。

★では、0809A/Wのテーマを教えてください。

やっぱり、一言で言えば「80’s」ですね。

★ ここからアニメに関するお話を少々。『クリィミーマミ』について、岸さんご自身の思い出などをお聞かせいただけますか。

好きな人は皆さん、そうおっしゃると思うんですが……本当に小さい時に、自分は優ちゃんなんだと思い込んで、ルミナスターを振りまわしてました(笑)。

★私の場合、それは『(魔法のスター)マジカルエミ』でしたけど、すごくわかります(笑)。

小さい頃からずっとアニメが好きだったんですけど、最初の作品が『クリィミーマミ』なんです。真似して遊んでいた、というか自分が優ちゃんだと思ってましたから、ね(笑)。やっぱり記憶にすごく残ってるんですよ。それに加えて、作品の背景がオシャレでしたし。アニメって日々、新しいキャラが出てくる世界じゃないですか。私も新しもの好きなのですぐに飛びつくんですが、やっぱり根本にはマミちゃんがあります。
実は子供の頃は洋服に少しも興味がなかったと思ってたんですよ。だけど今回、マミちゃんの洋服を作ってて気付いたのは、そうじゃなくて洋服に興味があったのかも、ということですね。ほら、マミちゃんの世界観ってオシャレじゃないですか。今の仕事をしているのも、あの頃に『クリィミーマミ』を観ていたからなのかな、と。
とにかく、すべての設定がオシャレなんですよ!

★実家がクレープ屋さんとか、羨ましいですよね。

そうなんです! 優ちゃんが乗ってるローラースケートとか(笑)。ボーイフレンドがいて、アイドルもやってて、街の風景から学校生活まで、オシャレすぎて本気で憧れてました。

★アニメからデザインのインスピレーションが湧く時などはありますか。

もちろん、あります。やっぱりアニメが好き、というのもあるんだと思うんですけど、アニメってすごく良い意味で極端じゃないですか。色だったり、デザインだったり。あと、男性に向けて発信しているアニメに出てくる女性キャラのお洋服なんかは、「男性が見て可愛い」と思うモノを着せている。それは結局、女の子が求めているお洋服なんですよね。女の子はやっぱり、男性にモテたいじゃないですか。だから、そういうアニメの女性キャラが着ているお洋服を見て、「可愛いな」と直感で感じたら、思わずその配色を洋服に反映させたりしています。
あとは、カラフルな感じが脳に響きますね。髪の毛の色が、ピンクだったりオレンジだったり、青だったり。アレ、みんなもやればいいのにって思いますよ(笑)。

★『マミ』以外で、ほかに好きなアニメはありますか。

『クリィミーマミ』の次は、『鉄拳チンミ』です。その作品に出会って「やっぱりアニメは面白い」と思いまして、それから『(鎧伝)サムライトルーパー』、『天空戦記シュラト』と、このあたりは当時の王道ですよね。その後、マンガなんかは相変わらず読んでいたんですが、アニメをあまり観なくなりました。しばらく間を空けて『AKIRA』、『(GHOST IN THE SHELL)攻殻機動隊』、『老人Z』、『PERFECT BLUE』とかカッコイイものにハマって。最近だと『涼宮ハルヒの憂鬱』とか『らき☆すた』(※1)を経て現在に至る、って感じですかね。『らき☆すた』は世界観のすべてが、好きになっちゃいました。

★『らき☆すた』のカラーなんか、洋服に反映させても可愛いですよね

そうなんですよ! つかさ(※2)ってキャラがいるんですけど、紫に黄色なんです。そこからインスピレーションをもらって洋服に反映したこともあります。そしたらいろんな雑誌で、「紫×黄」の特集が組まれていて、なんだよってね(笑)。
あとは「初音ミク」も最近好きです。ユーザー同士が一緒に盛り上がっている空気が楽しいんですよ。

岸ひろみ(きし・ひろみ)

「怖いんだけど、楽しくて、底知れぬ何かがありそうな“宇宙”のイメージを拝借して、galaxxxyというブランド名をつけました」と語る岸さんは、SHIBUYA109のショップ「JSG」時代に爆発的ヒットとなった「ネコ耳パーカー」の生みの親で、ファッション業界の有名人。デザイナー兼ディレクターとして活躍中。

 

galaxxxy

渋谷区道玄坂2-23-10・1F
TEL.03-3461-2033

■公式サイト

※1 らき☆すた

コンプティーク(角川書店)などで連載している美水かがみの4コママンガ。またはそれを原作とするTVアニメ。9月にはOVA版もリリース予定。
■公式サイト

※2 つかさ

『らき☆すた』に登場するキャラ、柊つかさのこと。ライトパープルのショートヘアに、黄色のリボンがトレードマーク。