第2回 「大激怒〜」の歴史的意味?
イラスト/KEI-CO
「怒」といえばいつも思い出す1シーンがある。といっても、そんなに肩肘をはった場面じゃなく、『ヤットデタマン』の大巨神(というか大馬神)の登場場面。
ピンときて、ははーん、と思った人には申し訳ないけれど、少々おさらいをします。
『ヤットデタマン』は81年から放映された「タイムボカンシリーズ」の第5作。タイムボカンシリーズの基本フォーマット通り、時空を超えてあるお宝を探す、というスタイルはいつも通りなのだが、『ヤットデタマン』には新機軸があった。それが人型の巨大ロボット、大巨神の登場。おそらく『機動戦士ガンダム』(79)によるロボットブームの余波なのでしょう。で、この大巨神は馬型の大天馬と合体してケンタウロス型の大馬神へとパワーアップする。
この大巨神(大馬神)はなかなか慈悲深く、三悪(本作での名はミレンジョ、コケマツ、スカドン)を一旦は成敗するものの、「罪を憎んで人を憎まず」ととどめを刺さない。ところが、助かった三悪は、大巨神が去ろうと背を向けるや否や、さっそく陰口をたたきはじめる。かくして、その陰口を耳にした大巨神は「大激怒〜」と怒り、弓矢で三人にとどめを刺す。……と、これが毎週のルーティンとして繰り返されるていたわけだ。
慈悲深いわりに短気で、陰口で怒り出す巨大ロボットというのが、いかにもタツコノギャグ。ヒーロー性の強い巨大ロボながら、それまでのシリーズのおとぼけ感漂う動物メカたちとのギャップが、美味い具合に埋められていた。
さて、ここで注目したいのは、三悪が大巨神を罵る時に使う言葉。「鉄クズ」といった定番の悪口がある中、ひときわ印象に残るものがある。「扁平足」というヤツだ。
この「扁平足」というのをヒーローロボットの悪口に思いついたというのは、実はなかなかの慧眼ではないかと思う。「お前の母ちゃんデベソ」じゃないけれど、三悪が言うに事欠いて、どうでもいい欠点を無理矢理指摘している感じがあるところにユーモアがあるし、なおかつその欠点――多くの主役ロボットは扁平足である――が事実、というところに意外な発見もあって、虚をつかれたような思いもある。さらに、大河原メカの持つ四角四面なイメージとマッシブな外観をうまく言い当てている表現でもある。
というわけで「スーパーロボット画報」(竹書房)を紐解いてみました。どれぐらいの主役ロボットが「扁平足」なのか気になったので。
とはいっても、足の裏の設定ははなかなか掲載されていない(このあたりの怪獣の足形と比較して、キャラクター消費の構造の差が浮き彫りにできるかも……)。
そこで、基本として「つま先とかかとの間に空間があるかどうか」を基準として判定してみました。ただ、いちおう「見た目」での分類なので、それほど正確なものとは言えないかもしれませんが。
とはいうものの、改めて歴代ロボットものを俯瞰してみると、実に主役ロボットの大半が「扁平足」なのだ。アトム、鉄人は言うに及ばず、マジンガーZからはじまるダイナミックプロ系、コンバトラーVから始まる東映本社&サンライズによる路線もまたしかり。もちろんガンダムだってご存じの通り、堂々たる扁平足であります。
例外としてもよさそうなのが、噴射口がそのまま足になっているライディーン。『機甲艦隊ダイラガーXV』(82)のダイラガーは足が自動車なので、接地面はなんとタイヤのみ! まあ扁平足ではないけれど、これはこれで大胆だ。
この傾向に微妙に変化が生まれてくるのが、ポスト『ヤットデタマン』ともいえる82年から83年のこと。このあたりから、「扁平足」ではあっても、つまさきパーツとかかとパーツが分割されたロボットが増えてくるし、それと並行して「非扁平足」ロボも目立ってくる。
『戦闘メカ ザブングル』(82)のウォーカーギャリア、『装甲騎兵ボトムズ』(83)のアーマードトルーパーはどちらも「つま先・かかと分割型扁平足」。一方、『銀河漂流バイファム』のバイファムは、「つま先・かかと一体型」であるにもかかわらず、「土踏まず」が存在するというレアな形状。「つま先・かかと分離型」としては、『超時空要塞マクロス』(82)のバルキリーが極初期の存在といえる。
さらに時代を下ってみると状況は整理され、、トランスフォーマーや勇者シリーズなどの、視聴者年齢が低いスーパーロボット系は伝統的「扁平足」だが、ハイターゲット作品のロボットは「つま先・かかと分離型」が主流という流れが明確になってくる。おもしろいのは『超電動ロボ鉄人28号FX』(93)が、「つま先・かかと分離型」になっている点。これは旧2作に対して現代的な印象を与えようとした結果であろう。
俯瞰してみると、「つま先・かかと分離型」というのは、「ロボットが立ったり歩いたりするには、そういう構造が必要であろう」という「リアルっぽさ」の要素として82〜83年というを境として定着していったことがうかがえる。いわばその時代は、ロボットの足のデザインの革命期であったというわけだ(ちょっと大げさ)。
「扁平足」という悪口と、それに「大激怒〜」するという構図は、こうして振り返ると、まさに革命直前の81年であればこそ、のものだったのだ。
(2007/01/21)