最終回 夏の終わりに
今年の夏もそろそろ終わりである。
毎年のことだがそう思うとなんだか薄ら寂しい感じを覚えるのは私だけか。
年ごとに進むヒートアイランド化の産物か連日記録的な猛暑日がマークされ、熱帯夜がそれに伴う。
加えてピンポイントで突然襲ってくる集中豪雨。誰が名付けたかは知らないが、ゲリラ豪雨とはよく言ったものだ。
私もこの夏、陽炎ゆらめく渋滞のさなかタライの底をぶち抜いたような雨に見舞われ、はじめの内は茹だった周りを冷やせよと喜んだものの、みるみる川のようになってきた道路を見て肝を冷やしかけたことがあった。
雨水を拭うワイパーが追い付かないほどの視界の中、この車が【マッハ号】だったらと、あらぬ妄想を浮かべてみたり。
マッハ号は、1967年のテレビアニメ『マッハGOGOGO』に登場する万能レースカー。
アメリカでも『Speed Racer』のタイトルで放映され人気を博した。
今年、ハリウッド映画で実写版としてリメイクもされている。
流麗なラインに縁取られた白いボディは、半世紀近く経った今でも色褪せることのないカッコ良さである。
オープンカーなので屋根がないのだが、緊急時には特殊ポリマー製のシールドが運転席を覆う。従って雨が降っても問題ナシ……のハズがふと疑問。
マッハ号ってワイパーついていたっけ?
などと車の屋根を叩く雨音も忘れて記憶と格闘しているウチに豪雨の渋滞を無事脱出。
打って変わった夏空が視界に開けた。
ハナシを戻そう。
幾つになっても、夏という季節の終焉にさみしさを感じてしまうのはなぜだろう。
夏は行事が多い。気分が開放的になる。花火がきれい。スイカが旨い。クワガタがカッコいい……。
だから夏よ終わるなと、歳をとった今でも本気で願う。自由人になりそこねた私にも毎年つきまとうこの気持ちの正体は、やはり子供時代に過ごした夏、あるいは夏休みの楽しかった想い出によるところが大きいからだろう。
そんなのいつまでも引きずってるオトナはお前だけだろって?
ま、いいじゃないスか。
もちろんリアルタイムでも、この夏はいい思い出になるであろう出来事が幾つかあった。
例えば、初めて単独で行わせてもらったたサイン会。
映画『人狼 JIN-ROH』のBlu-ray Disc発売を記念した催しだったのだが、たくさんの方々に並んでいただいたことは、心からの感謝と共に、この仕事を続ける上での大きな励みになること必至。
本当にありがとうございました。
来年はどんな夏になるだろう。その前に秋を食べ尽くして、冬を熱く過ごして、春に夢を描いて……そんなポジティブな大人になれますように。
さて、この連載も今回で一区切り。拙い文章に二年近くも付き合って下さった皆様に感謝いたします。
いずれ、またどこかでお会いしましょう。そう、できればスクリーンの上で――。
(2008/08/25)
イラスト/西尾鉄也