藤木義勝のMake my day!

第14回 和製アクションで空薬莢が鳴った日

『クライムハンター』で実際に使用されたベレッタ92F。まだ日本ではモデルガン化されていなかったので、ディティールが似た92SBモデルをベースに製作された。

今更ながらの感もあるが、自室専用のビデオデッキが欲しくなった。
狭い部屋の省スペースを考えて、コンパクトな再生専用機に的を絞ったのだが、これがなかなか見つからない。
近場の家電量販店を何軒か回ってもVHSデッキの売り場自体が縮小されていて、機種も驚くほど少なくなっている。目当ての品はどこにもなかった。
ネットで探しても似たような状況である。時代の流れというものか。
正月休みに近所のリサイクルショップが開いていたので立ち寄ってみた。
ざっと見ても件のデッキは見当たらない。物は試しと聞いてみた。
「再生専用のビデオデッキって……」
「アルヨ」
外国人の店員さんが棚の上の箱を取り出した。
箱入りとは気付かなかった。口は開いているが中身は新品らしい。機種も探していたメーカーそのものズバリである。
思わぬ偶然にささやかな感動を覚えつつ聞いた。
「いくら?」
「ニセンエン」
安い。初売り特価といったところか。迷わず購入した。
以来、昔集めたビデオテープを押入れから引っ張り出して楽しんでいる。
既に廃盤になっているようなアクション物が多いのだが、音の良さがいまだに私の中では他の追随を許さない巨大CDラジカセにつないで観賞すると、気分はさらに盛り上がる。

日本ではオリジナルビデオという、劇場公開を前提としないレンタル専用の映画がある。
先駆はエモーションレーベルが1985年に制作した『うばわれた心臓』だが、市場として確立したのは、東映が1989年に発売した東映Vシネマだろう。
その記念すべき第一作目が『クライムハンター 怒りの銃弾』という作品で、後にシリーズ化され、計三本が作られた。
舞台はロサンゼルスのリトル・トーキョー。世良公則氏演じるジョウという刑事が愛銃のベレッタ92Fを手に犯罪に立ち向かうアクション物である。
限られた予算ゆえ撮影は全て日本で行われ、登場人物の台詞も全て日本語である。だが、そのデッチ上げ感がテンポの速いストーリー展開と相まって小気味良さすら醸し出している不思議な作品だ。
ここで特筆すべきは、作品のいたる所にちりばめられたガンアクションシーンの数々である。
周知のとおり、日本では撮影の現場においても銃器類の制約がとても厳しい。
実銃ベースでブランク(空砲)を派手に使用できるハリウッド作品と違い、市販のプラスチック製モデルガンと同じ物を規定内で改良し、安全かつリアルに作動させるには相応の技術を要する。
『クライムハンター』では、邦画におけるガンアクション物のリスクに臆さず、徹底的なまでに格好よさとリアルさを追求しているのである。
この作品のヒットを期に、後に供給過多に陥るほど作られたオリジナルビデオ作品だが、近年では縮小傾向に向かっているという。
小売価格を抑えることができるDVDに移行している市場にあわせ、制作のコストも安くなりつつあるのが現状である。
願わくば、低予算でもイキのいい良質のアクション物が観たい。二十年前、低迷する日本映画の現状を打開すべく世に放たれたあの作品のように。
さらに願わくばそんな作品に参加したいと願ってしまうのは役者のサガか。

(2008/01/21)


ESSAY AND ESSAY
  バックナンバー