藤木義勝のMake my day!

第15回 リアルな大嘘(BIG SHOT)

ハイウエイパトロールマン(通称ハイパト)

前回に引き続き、プロップガンのことをもう少し。
プロップガンとは、映画やTVドラマなどで銃を扱う際に用いられる小道具の呼称である。

その昔、私が夢中になって見ていたドラマの中のアウトローたちは、毎週日替わりの如く東京のどこかで派手な銃撃戦を繰り広げていた。
撃ち殺されても仕方のないような犯罪を繰り返した犯人たちは、これまた容赦のない刑事たちが放つ銃弾の雨に倒れまくった。
この言い回しはまんざら大げさではなく、「あれ、このヒトこないだ別の番組で撃たれていたっけ」といったことが珍しくないほど刑事アクションドラマが量産されていたのである。

当時のドラマを影で支え続けたプロップガンの中に『日活コルト』というモデルがあった。
昭和30年代に日活で量産された無国籍アクション映画の中で多用されたことが名前の由来だが、プログラムピクチャーの衰退と共に活躍の場をテレビドラマに移してからも真っ赤な火を吹きまくった。
形はコルト32オートに似せてあるが稼動部分は引き金のみ。モナカのように真ん中で二つに分かれる金属製の本体の中に、発火用の火薬や電池を仕組んだシンプルな構造である。
一発撃つごとに空薬莢を弾き出すようなリアルさは望めないが、電気着火式で確実に発火し、多少乱雑に扱っても故障しないタフな銃だったという。
『日活コルト』方式の電着銃は他にも何種類か存在し、リボルバー型は刑事、オートマチック型は犯人といった具合で使い分けられていたこともあった。

昭和40年代後半からは、プラスチック製のモデルガンが台頭をあらわし始める。中でもモデルガンメーカーのMGCが販売した『ハイウエイパトロールマン』というモデルが映画やテレビに頻繁に登場。私を含め当時の少年たちにとって、刑事の銃=ハイウエイパトロールマンというイメージが刷り込まれるほど多くの作品の中で活躍した。
故・松田優作氏が『太陽にほえろ!』の劇中(72話「海を撃て!! ジーパン」)で、この銃を手に突堤を走った姿が印象深い。
その後、日本のプロップガンはディティールが精巧なプラ製の銃へとシフトしていく。

ちなみにハリウッド映画などで使用されるプロップガンは、基本的に実銃がベースである。
視覚効果を狙って(派手なマズルフラッシュ等)、特殊な火薬を調合した空砲を使用しているのだが、弾の先にある弾頭代わりの詰め物(ワックス等)が、時に不完全燃焼を起こしたまま燃え尽きずに銃口から飛び出して、思わぬ事故を引き起こした例もある。
古今東西、銃撃戦の撮影においては常に細心の注意が払われているのだ。

話を戻そう。
日本映画の銃撃戦はその後ある作品を契機に革命的な進歩を遂げていく。
前回触れた『クライムハンター 怒りの銃弾』(89年)である。
ディティールこそ精巧だが、所詮はプラスチック製の(あえて言うならばオモチャの)銃が、ハリウッド作品に負けんばかりのスピードで空薬莢を吐き出している。被弾した車のドアには擂り鉢上のリアルな穴が開き、俳優が掛けた眼鏡への弾着シーンが、不自然なカットを挟むことなく表現されている。
邦画アクションに付きまとっていたある種のジレンマから開放された瞬間だった。
エンドロールに目を凝らす。「ガンエフェクト 納富貴久男」。
それから一年後、練馬文化センターで行われた映画『ケルベロスの島(仮)』のオールスタッフ初顔合わせの席で、納富氏に会ったときの興奮は今でも忘れない。

次回のエッセイの取材を兼ねて横浜にある氏の事務所を訪ねることにした。


(以下次号)

(2008/02/21)


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