渡辺由美子の乙女はつらいよ

第12回 私のカラオケ道

作品への思いを歌で表現するのがオタカラ!
イラスト/こじま あや

やばい。私の中のセンサーが告げています。そろそろ切れそうです……体内カラオケ分が!

というわけで、全国カラオケ友の会の皆さまこんばんは。頻度は違えど定期的にマイクを握らないと落ち着かない御仁は結構多いんじゃないでしょうか。
私が好きなのはもちろんオタクのカラオケ、略して「オタカラ」! 好きな作品のOP、ED、カップリング曲の中からコレだという歌を見つけて、仲間と魂をぶつけ合う。
オタカラの良いところは、好きな作品の世界観を共有できるところですね。たとえ会話をしなくても、その人が作品をどんな風に好きなのか、歌のチョイスと歌い方でわかります。

それまでカラオケであまり歌わなかった40代の友人男子は、『涼宮ハルヒの憂鬱』にハマったとたん、長門さんソング一人ヒットパレードを始めました。間奏に入る長門さんのモノローグももちろん忠実に再現。曲を聴き過ぎて覚えちゃった様子が涙を誘います……。

時にカラオケでは、歌の内容と歌い手の心情が一致しないこともあります。
この前は、Uちゃんが入れた明るくさわやかなイントロに全員が凍り付きました。それは、三角関係の果てに殺生沙汰という恐ろしい結末を迎えた『Scool Days』……! ヒロインを応援していた彼女が静かに歌い出すと、全員がお通夜に列席しているみたいにしーんとなりました。

……作品の世界観以外にも、ま、いろいろと共有するわけですよ。

メンバーによっては、「イメージソング大会」が始まったりします。
作品とは全然関係ない歌に、自分が思い描いた設定をつけて、カラオケで発表するのです。
「この曲は、エドがアルと離ればなれになった後に、アルのことを思い出しながら放浪している時の歌。時期としては最終回から劇場版までの間かな」「あ〜!」
「これは水×がカラオケで栄×くんに告白しながら歌った曲で、この後ふたりで寒空の中抜け出して屋上に行くんだよ」「ラブい!」
こういう妄想に同意してくれるのは圧倒的に女子友ですね。オタク女子が集まるカラオケでは、本人に聞かないと何の作品の歌なのかわからないこともしばしばです。


様々な人間模様がかいま見える人間交差点

アニメライターである私の場合、仕事のメンバーと行くカラオケも「オタカラ」です。
仕事メンバーと行くのですから、それは、これからの仕事がうまくいきますよーにという願いが込められています(私だけか)。
接待カラオケ、それは今後の仕事をより発展させるための政治の場!!

オタカラといっても、エライ人に受けがいい歌をチョイスしたいのはいずこも同じ。知り合いに昭和30〜40年代のアニメ&特撮ソングを一通り歌える女子編集がいます。彼女を誘って業界人カラオケに行ったら、年上男性に大人気!「いいねぇ、彼女」。貴重な女声コーラスもばっちりです。彼女曰く「営業時代に培った技」だそうで。
私も負けてはならじと、向かいに座っていた男性が制作に携わったアニメの主題歌を歌ってみました。するとその男性は、
「その歌聴くとね、ボクは資金調達の苦労を思い出すんだ……」と肩を落としてしまいました。がーん。テンション落としてどうするよ。接待って難しい!!

よかれと思った選曲が、裏目に出るのもまた一興。
以前、アニメ関係者で行ったカラオケでのこと。編集の女の子が、場を盛り上げるために知名度の高いアニソンを選んで歌い出すと、かわいらしい歌声に皆がほのぼのとした気持ちに。……ところがその横で、藤津亮太さんがみるみる死んだ魚の目になっていくではありませんか(←アニメ的に言うとハイライトがなくなっている状態)。
彼女が歌っていたのは『美少女戦士セーラームーンR』のED、「乙女のポリシー」。
それは藤津さんがカラオケのシメに必ず歌う“魂の持ち歌”だったのでした。
編集の女の子も、悪気はなかったんですよ。
だって30代男子の持ち歌が「乙女のポリシー」だなんて、誰もわからないじゃないですか……。


カラオケを楽しむための最終奥義

かようにカラオケ好きな私ですが、実は昔は苦手でした。
歌がうまい人にはとてもかなわない。
アニメじゃない流行の歌を知らない。
オタクじゃない一般人と行ってアニソンばっかり歌っていたら浮いてしまう……。
こうした“場の空気”を考えて悩んでしまう人は、私と同様に「我関せず力」が弱いタイプなのかもしれません。

カラオケに行く度に、好きな歌がうまく歌えず悩んでいた私は考えました。
事前に準備していったらどうよ、と。

まず、歌いたい歌を10曲「課題曲」としてリストアップすることから始めました。通常のカラオケで回ってくるのはせいぜい10曲なので、それだけ練習しておけば問題ありません。
アニソンというところは譲れませんが、一般人に知名度がある歌手の曲も少しは入れておきます。

私がこだわったのは、今ハマっている作品のテーマ曲に絞るという点でした。これには思わぬ効果がありました。
意識が「自分の歌」ではなく、「作品」に向かうようになったのです。
自分の歌を人様に聞いてもらうと思うから緊張するのであって、好きな作品の世界観を表現するのだと思えば、下手でも全然気にならないんですね(笑)。

そして、大事なのはマイリスト。
カラオケ屋さんのHPから検索した曲名と曲番号を、あらかじめプリントアウトしておくのです。毎回10曲づつ増やしていけば、リストはどんどん膨らみます。行く先のカラオケ屋に新曲が入っていなくても安心です。

『灼眼のシャナII』で池くんが言っていた名言があります。
「いい思い出作りは、いいダンドリから始まる」。素晴らしい。至言ではないですか。
「我関せず力」が低い人間がカラオケを楽しむためには、こうしたダンドリ、「事前準備力」で補うのが肝心。準備が自信を与えてくれるのです。

そんなわけで、私はカラオケには必ずマイリストを持参しています。10年前から始めたシステムなので、もういいかげん分厚いのですが……。

「そんなに厚いリスト持っていったら、引く人は引くよね〜」とからかわれたりしますが、大丈夫です。このリストを見て引かない人としか行きませんから(笑)。
我に返ったら負け、これがカラオケの最終奥義だと思います!

(2008/01/21)


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