昔、爺さんと暮らしていた頃も、僕はなにかと騙されやすい馬鹿な奴だった。そのせいで、何度も失敗した。自分だけじゃなく、爺さんも大変な目にあわせたっけ。せっかく久しぶりに目覚めたんだ。ここはひとつ慎重にいこう。僕は目を閉じて、じっと眠った振りのまま、しばらく様子を伺うことにした。足音がして、声の主が、随分近くに寄ってきた。僕は緊張した。
「ねえ、もしもあなたがピノキオなら、起きて」
その時やっと気づいた。その声は、別に僕に危害を加えようって声じゃない。むしろ弱よわしくて、おどおどして、少し震えるような感じが混じってる。僕はせいいっぱい考えをめぐらせた。僕も緊張してるけど、声の主も緊張してる。おそるおそる僕に声をかけている、って感じだぞ。とにかく女の子だってことは間違いない。どんな女の子なんだろう。目を開けて見てみようか。いや待て待て。もう少し用心するんだ。こういう、素敵な声の持ち主が、意外に危険人物だったりするんだぞ。僕は、ゴクリとつばを飲み込んだ。
「あ。動いた。起きてるのね、ピノキオ」
しまった、つばなんか飲まなきゃよかった。ごまかさないと! 僕は目を閉じたまま、言った。
「僕は起きてない。まだ眠ったままだよ」
 
 
  
 
 
 
 
 
 
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