馬車も、郵便屋さんも、警官も、金物売りも、アメ売りもいなかった。子供たちもいなかった。向かいのパン屋さんも、隣の鍛冶屋さんも、跡形なく消えていた。どう考えても、ここは、僕のいた村じゃなかった。でも、さっきまで僕がいたのは、あれは確かに、僕と爺さんの工房だ。僕は、いつかサーカスがやってきた時に入ったオバケ屋敷を思い出した。村がまるごと、あのオバケ屋敷になってしまったみたいだった。あまりのことに、僕は、足がすくんでしまった。
「村は?」
と、僕はゼペットに聞いた。
「あなたの村は、この下に埋まってる。もう、500年も前からね」
埋まってる? 500年? 僕は頭の中がグルグルまわった。目もまわりそうだった。
「さ、ぐずぐずしてないで、歩こう。私のお店は、すぐそこよ。取って置きの、素敵な服を作ってあげる。きっとあなたに似合うんだから」
こんなオバケ屋敷みたいな場所の、どこにお店があるんだ? いやそれより、そもそも、服の話なんか、してる場合じゃないよ。そう言おうとしたけれど、やっぱりゼペットの言葉に逆らえない。無理やり歩きだそうとして、僕は足がもつれてころんでしまった。目覚めたばっかりだった上に、足がすくんで、しかも目がまわってたんだ。そりゃ、ころぶよ。
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