よく見ると親方も、ゼペットとおなじような、見たことのない黒い皮のコートを着ていた。なんとかゴム、って言ったっけ? ゼペットは、さっきの3回目の火花で焼かれて、コートがなくなっていた。その下の服もあちこち焼け焦げて穴があき、なんだか可哀想だった。いやいや! 僕なんて、なんにも服を着てないんだもの。僕の方が可哀想さ。
「おい、ゼペット。今、この小僧のことをピノキオと言ってたな」
「そうよ。ピノキオなの」
「やれやれ。ホントに見つけるとはな。お前のご先祖様は、度外れた正直者じゃわい」
「親方、ありがとう。私を心配して探しに来てくれたのね」
「ふん。わしはただ、死に場所を探してうろつきまわっとっただけじゃ」
「でも親方。見て、私、ピノキオを見つけたでしょ。だから、帰ってきて。死に場所を探すとか、言わないで」
「もう、親方じゃない。ただのジジイじゃ」
親方は、 なんだかしんみりした言い方をした。 もの凄い勢いでペダルを漕ぎながらしんみり喋るなんて、人間ってのは、複雑なことができるんだなあ。僕なら、ペダルを漕ぎながらハンドルを操るだけでも難しいよ。
 
 
  
 
 
 
 
 
 
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