親方は、ペダルを漕ぎながら、しんみりしながら、運転しながら、自分のコートを脱いでゼペットの肩にかぶせた。
「ヘソが見えとるぞ」
ゼペットは、コートを体に巻きつけた。
「……親方。帰ってきて」
「今回だけは、お前を、村まで送ってやるわい。じゃがそのあとは、やっぱりお別れじゃな」
「ピノキオを見つけたのよ。ね、見て、この子」
親方の顔が、少し僕の方に傾いた。メガネの奥の目で、僕を見たんだと思う。
「ほら! この子、どこにも、機能停止ボタンがないの! すごいでしょ」
ゼペットが、僕のことを自慢しているようなので、僕はなんとなく誇らしげな気分になった。親方は、答えずにペダルを漕ぎ続けた。
「それなのに、この子は、私のことを襲ったりしないのよ。ね、ピノキオ、私を襲いたいと思わないんでしょ」
「襲うってどういうこと?」
「さっきの鳥みたいに、電撃を浴びせてくることよ」
 
 
  
 
 
 
 
 
 
(C) 2007 西田シャトナー・灯夢/BANDAI VISUAL