クリケット・ジョーの声が聞こえているはずのフォックス中尉は、何も言わず、ペダルを漕ぎ続けていた。キャット少尉も、黙って岸壁をにらみ続けていた。
「……さすがの推理だな、クリケット・ジョー」
フィラメントは、ベルトの縫いつけられた袋から、小さな小さな金属の箱を取り出した。箱を開けて、中身をクリケット・ジョーに見せた。
頭だけで甲板に転がっている僕には、その中身は見えなかったけど、カラリ、と何か小さな軽いものが箱の中で転がる音を聞いた。
「何の薬だ?」
とクリケット・ジョーが言った。薬が入っているようだ。
「眠気覚ましだな、簡単に言えば。俺の村の科学者チームの、長い長い研究の成果だ」
「眠気覚ましが、研究の成果なの?」
と、僕は地面に転がりながら、言った。
「ただの眠気覚ましじゃねえ。こいつは、つまり、超・眠気覚ましさ」

 

 
 
  
 
 
 
 
 
 
(C) 2007 西田シャトナー・灯夢/BANDAI VISUAL